MSP-EXP430FR5994 ローンチパッド〜Energy Trace++が恐しい
はじめに
とても気になる MSP430 の FR5994 ですが、本日時点ではmouserなどで1000pcsテープのみ予約受付が開始されているもののまだ量産出荷態勢ではないようです。
とはいえ、FR59/FR69 両シリーズのみが対応しているという Energy Trace++ という省電力実装アシスト機能がとても気になることもあり、もう、見切り発車の一環としてローンチパッドを購入して確認しました。
以下、駆け足ですがメモです。
ローンチパッドのメリット
評価チップや評価ボードはいわばメーカーがユーザーを量産にいざなうためのツールですが、TIのローンチパッドは、ラズパイやArduinoの影響もあるのか特段に大きな投資(コスパがいい)がされていると思います。
- データシート、エラッタ、ユーザーズガイドを熟読する前の段階で、ひとまず手軽に動作を感じることができる。
- メーカー自身によってそれなりに練られオーソライズされ実際に実装されたハードウェア実装(リファレンス実装)の設計情報(回路図、基板図の両方とも)と、そのリファレンス実装上で動作するサンプルソフトウェアのソースコードが得られ、開発全般のイメージを立てることができる。
- しかも安価である。
特に、整理されたリソース提供態勢が日本のメーカーより段違いに丁寧で洗練されており、さすがTIだな、と感じさせられます。この意見は TI 好きの輩の贔屓目な意見かもしれませんが...TI が好きで MSP430 を使うゆえんでもあります。
MSP430FR5994 MCUの特長
MSP430 と 256KB というアンマッチ に心奪われています。OSが楽々載るかも、と。
- 豊富な周辺機能(12bit ADC, Timers, SPI, UART, I2C, CRC, AES and more...)
- 256KBのFRAM(8MHzでアクセス可能)
- CPU独立の低消費電力数学処理モジュール(LEA)
その他詳細は下記を参照してください。
MSP-EXP430FR5994 ローンチパッドの特長
ローンチパッドのユーザーズガイドは、データシートのような無機質さとは対極の洗練されたプレゼンテーションを感じるコンパクトかつ分かりやすいものとなっています。
MSP430FR5994 LaunchPadTM Development Kit (MSP‐EXP430FR5994) - User's Guide
ハードウェアのレイアウトです。
機能ブロック図です。
上半分が外部電源とデバッグプローブ部、下半分がアプリケーション部となっています。
以下に、ユーザーズガイドにある特長記述を列挙します。
ハードウェア
- USB 給電(外部電源の準備不要)
- ESD 保護
- LDO オンボード(300mA)
- XTAL オンボード(32768kHz。Epson FC-135R)
- ez-FET オンボードデバッグプローブ(ICE不要です)
- EnergyTrace++ 消費電力モニター(パテント。CPUと周辺のStatus取得も可)
- microSD ドライブ(SPI4+検出1pin。8GBのカードも付いていました)
- 0.22F スーパーキャパシタ(意外と外形は小さいです)
- 2 LED と 2 ボタン(とリセットボタン)
- 40 ピンの Boost Pack ピン
ソフトウェア
- Out-of-box 出荷時書込済ソフト(現在気温計測のPC表示, FRAMログ, SDログ)
- クラウドベースの Resource Explorer, MSPWare と Code Composer Studio Cloud
- 全ソフトのソースコード(Oob, Lチカ, 録音再生, タッチ液晶, 擬似EPROM)
目玉機能?の Energy Trace++ 機能をチェック
- すべてのMSP430とMSP432で、電流の計測が可能
- 特定のMSP430とすべてのMSP432で、CPU状態のトレースが可能
- 特定のMSP430で、ペリフェラル状態のトレースが可能
- MSP430でEnergy Traceを使うには、eZ-FET(このローンチパッドの上半分)またはMSP-FETが必要
- MSP432でEnergy Traceを使うには、MSP432ローンチパッド上のXDS110-ETまたはMSP432 アダプターを付けたMSP-FETが必要
- CCSとIAR((EW430 and EWARM))に対応
MSP430FR5994は、なんと、MSP432を差し置いて、電流/CPU状態/ペリフェラル状態のすべてをトレースできる Energy Trace++ に対応しています...夢のような世界がまぶたに浮かびます。
しかし、ローンチパッドはパソコンに挿せばさくさくとなんでもオッケーとはいいますが、少しばかりは準備が必要です。以下、本当に駆け足ですが私の都合で行った準備の手順です。
CCS(Code Composer Studio)をローカルにインストールする
CCSにはクラウド版もあるのですが、今後このパソコン( iMac 21.5-inch, Mid 2011 )で開発をしていく予定なので、ローカル版の最新版である 7.0.0.00042 を Download CCS - Texas Instruments Wiki からインストールしました。
ちなみに普段はWindowsで仕事してます。あと MacBook Air の仮想UbuntuにもCCSが入っています。Macにも無事インストールできたようで、制覇...少しご満悦気分です。
Resource Explorer から サンプルソースコードをダウンロードする
CCS の View / Resource Explorer メニューから Resource Exploler を開き、左ツリーのSoftware / MSP430Ware / Development Tools / MSP-EXP430FR5994 / Demos / Out of Box Experience を選択します。そして右上の Import to IDE ボタンをクリックすると、CCS のワークスペースにプロジェクトがダウンロードされます。
MacとローンチパッドをUSBケーブルで接続し、プロジェクトをRUNする
CCS の RUN / DEBUG を選択すると、プロジェクトのビルド、ターゲットへの書き込み(ローンチパッドの上半分にあるLEDがチカチカします)が行なわれます。サンプルソースコードなので当然ノーエラーです。そしてリセットベクタで実行が停止した状態となります。
次に CCS の Tools / EnergyTrace(TM) メニューを選択すると、EnergyTrace(TM) Technology / Power / Energy / States というタブウィンドウが追加されます。最後に、EnergyTrace(TM) Technology タブ内のタイマーアイコンからのプルダウンでとりあえず 5sec を選択します。
準備完了、F8キーを押して実行...なにやらごにょごにょと横棒グラフが動く様子にわくわくします。
ど
れ
み
ふぁ〜、すごっ!
特に説明は不要と思います...おそろしいまでの出力が得られました。
まとめ
自分が目をつけたCPUを実装したローンチパッドがあったのはとてもラッキーでした。
DVCC/AVCC, LFクリスタル, リセット, ESD保護, microSDドライブ, スーパーキャパシタ, JTAG, USB接続, LED接続 などのハードウェア設計や、FRAMやSDを操作するソフトウェアサンプルはそのまま借用して開発期間の短縮に役立ちそうです。
Energy Trace++ の見える化にはびっくりしました。省電力の詰めなどの終盤の憂鬱な作業が楽しくなりそうです。ソフト実装時には ULP Adviser というアシスト機能もあるとのことで、低レベルはサクサクこなしてアプリケーションに思いをはせる時間をたくさん取れそうです。(そうはいかないのでしょうが...)
もう、ローンチパッドは一旦箱にしまい、実際の設計に着手しようと思います。